会社を設立するときには法務局で会社設立登記をする必要があり、このときに必要となるのが『代表者印』です。
2021年2月15日に施行される商業登記法第20条削除(印鑑届出義務廃止)に伴い、商業登記規則の改正案が発表されていますが、代表者印は会社が設立された後に法人として何らかの重要な契約を締結する際や、許可申請など、自治体等の手続きを行う際に押印が求められます。
そこで今回は、意外に知られていない代表者印について解説します。
会社の実印といわれる代表者印
個人の印鑑登録は任意ですが、法人の代表者印には印鑑登録が必要です。
そもそも、なぜ登録しなければならないのでしょうか?
それは、万が一のトラブルに備えるためでもあります。
たとえば、契約上のトラブルが起きたとき、相手方が「この契約書は偽物だ」「当事者が署名・押印をしていない」などの主張をしてきたとします。
法律では、『本人、またはその代理人の署名、または押印があるときには、その私文書は真正に成立したものと推定する』という規定があります。
要するに、本人または代理人の署名・押印があれば、契約書などの書類は正しく成立していることが推定されるのです。
この“推定”を得るためには、『これが会社代表の署名・押印である』ということが客観的に明らかでなければなりません。
そこで、法務局に代表者印として印鑑を登録しておく必要があります。
法務局から印鑑証明を取りよせて照合すれば、代表者印が押印されていることが実証されます。
これは、個人の実印と同じです。
代表者印は一般的に二重丸になっており、中央には『代表取締役印』などの役職名、それを囲む外側の円の部分には『株式会社●●』と社名が書かれています。
必ずしもこの形状の印鑑を代表者印として登録する必要はありませんが、サイズについては『商業登記規則』によって決められており、『1辺の長さが1cm以上3cm以下の正方形に収まる大きさであること』という規定があります。
この枠のなかに収まる大きさで代表者印を作る必要があります。
会社名を変更したら代表者印も変更するべき?
会社設立後に会社名が変わるときには、『商号変更登記』という登記を行い、新しい会社名で登記をし直さなければなりません。
では、このとき代表者印も新しい会社名に変更しなければならないのでしょうか。
結論からいうと、必ずしも代表者印を変える必要はありません。
ただ、『株式会社●●』と社名が入っている代表者印を使っている会社が多い現状では、やはり新しい社名の代表者印を使いたいと考える人も多いのではないでしょうか。
新しい社名の印鑑を作り、それを代表者印にしたい場合は、法務局にて変更(改印)の手続きをする必要があります。
改印の手続きをする際は、次のものを用意しましょう。
●代表取締役個人の実印
●代表取締役個人の印鑑登録証明書(3カ月以内のもの)
●新たに登録する代表者印
●改印届書
改印届書の様式は、法務局のホームページからダウンロードするか、また、窓口に備え付けてあるものを使用します。
ちなみに、改印に関する手数料は無料です。
注意しておきたいのが、代表者印を変えたにもかかわらず、改印の手続きをせずに新しい代表者印を使い始めてしまうケースです。
法務局に届出しているものと異なる印鑑を代表者印として使用してしまうと、前述したように『真正に作成した』ということを証明することが難しくなってしまいます。
万が一のトラブルに備え、代表者印を変更した場合はすぐに改印届を出し、手続きを行いましょう。
※本記事の記載内容は、2021年2月現在の法令・情報等に基づいています。